一般社団法人 日本消化器がん検診学会

学会概要

利益相反(COI)に関するQ&A

1.医学研究に係るCOIとは

1.医学系研究とは漠然としていますが、具体的にどのような研究をいうのでしょうか?
「医学系研究」とは、医療における疾病の予防方法、診断及び治療方法の改善、疾病原因及び病態の理解並びに患者の生活の質の向上を目的として実施される活動のことです。人を対象とする医学系研究には、個人を特定できる人由来の試料及び個人を特定できるデータの研究を含むものがありますが、個人を特定できる試料又はデータに当たるかどうかは文部科学省・厚生労働省の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(2014年12月22日全部改正,2017年2月28日一部改正)に定めるところによります。
2.産学連携で医学系研究を行う場合、なぜ、利益相反が問題になるのですか?
人を対象とする医学系研究を産学連携で行う場合には、他の領域の産学連携研究とは異なり、医学系研究の対象・被験者として健常人、患者などの参加が不可欠です。産学連携により医学系研究に携わる者には、一方で研究者として資金及び利益提供者である製薬企業などに対する義務を負うとともに、他方で被験者の生命の安全、人権擁護をはかる職業上の義務を負います。同一人におけるこのような二つの義務は、単に形式的のみならず、時には実質的にも相反し、対立する場面が生ずることになります。1人の研究者をめぐって発生するこのような義務の衝突、利害関係の対立・抵触関係がいわゆる利益相反(Conflict of Interest:COI)と呼ばれる状態です。換言すれば、産学連携で行われる医学系研究はほとんどCOIの状態にあり、回避することができないと言えます。
3.臨床研究で、なぜCOI状態が問題になるのですか?
臨床研究で得られる結果は,新しい診断法,治療法,予防法などを作成するために重要な情報源となります。研究者が特定企業との金銭関係や個人的な関係が強くなると,その関係企業を優先し,バイアスリスクの発生が起こりやすくなってします。COI状態が適切に管理されていないと,極端な場合,研究不正の原因となる可能性があります。その結果,誤った解釈や結論が導かれてしまうことで,患者が誤った治療を受けたり,国民が無駄な金銭的負担をかけられたりすることになるからです。
4.産学連携により実施されるのは医学系研究だけでなく、基礎研究でも広く行われています。基礎研究はCOI申告の対象からはずしてよいのでしょうか?
国の政策として、基礎研究で得られたシーズを臨床へ橋渡しをするトランスレーショナルリサーチが積極的に推進されており、産学官の連携も活発化しています。このような背景の中でどこまでが基礎研究で、どこからが医学系研究であるかの定義は難しくなっています。基本的な考え方として、産学連携により行われている研究が基礎的なもの(前臨床試験、人体血液や生体サンプルの解析など)であっても、その成果が臨床現場での診療(予防法、診断法、治療法など)に影響を与え、資金提供をしている企業や営利団体の利害と関係する事が想定される場合には、関係企業とのCOI状態を開示しておくことが望ましいと思われます。なぜなら、産学連携による基礎研究成果に疑義が生じても、COI状態が適正に申告されていれば、学会としても適切に説明責任を果たすことが可能になるからです。
5. 企業との関わりから想定されるバイアスリスクとはどのようなものがありますか?
臨床研究は結果がどうあれ,すべて論文公表する義務が研究者に課せられています。しかし,臨床研究の実施や結果の解釈,論文公表の過程で企業が影響力を及ぼす環境や契約があると、下記のようなバイアスが起こりやすくなります。
1)臨床研究Trial bias (介入研究バイアス)
企業にとって自社医薬品の臨床研究で不利な結果が予測される場合、研究を実施しない
2)Publication bias(出版バイアス)
企業にとって不利な結果で出た場合、論文を公表しない
3)Reporting bias(報告バイアス)
企業にとって好都合な公表(効果があれば過大評価し、有害事象は過小評価)になりやすい
6.COIは、研究倫理に関係しますか?
COI状態を適切に管理しないと、バイアスリスクにとどまらず、研究不正につながることもあります。医学系論文撤回の7割近くが研究不正(ねつ造、改ざん、盗用)によると報告されていますが、その原因の一つとして、深刻なCOI状態が指摘されており、COI管理は研究倫理の一つと考えられます。
7.COIの管理は本来,研究者が所属する機関・施設で行うものと理解していましたが、学会のCOIマネージメント(管理)とはどのようなものですか?
会員の多くは所属機関・施設で医学系研究を実施し、得られた成果を各専門学会で発表します。産学連携で行われる医学系研究には実施とその発表という2つのステップがあり、それぞれにおいて透明性、公明性が求められることから、所属機関・施設だけでなく、学会発表においてもCOI状態の開示が求められます。所属機関・施設では、当該医学系研究に携わる研究者全員が実施計画書と同時にCOI自己申告書を施設長に提出し、当該施設でCOIマネージメントを受けることが求められます(文部科学省・臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」、全国医学部長病院長会議「研究者主導臨床試験の実施にかかるガイドライン」参照)。一方、本学会は、本学会が行うすべての事業を対象に、これを行う学会関係者のCOI状態を自己申告によって開示させ、これにより学会関係者の社会的・倫理的立場や責務を明確にすることを目的としてCOIマネジメントを行っています。
8.産学連携による医学系研究を行う上で、COIの観点から研究者が遵守すべきこととは何ですか?
医学系研究に携わる研究者としての義務と医療専門家である医師としての義務が同一研究者に課せられますが、これら二つの義務の対立が現実化した場合、医療専門職にある研究者は、対象である被験者の人権擁護者としての立場を最優先し、被験者の利益のために最善を尽くすべきことは当然と考えられます。したがって、資金提供者の利益のために、またさらに自分の利益維持のために研究の方法、データの解析、結果の解釈を歪めるようなことが、絶対あってはなりませんし、社会的にも許されない行為であると言えます。
9.医学系研究を行ったり、その成果を発表したりする場合、企業からの資金提供が悪いような印象を受けますが・・・
A.国策として科学技術基本計画が推進されており、企業から正当な報酬を受けることや、医学系研究の推進にむけて資金援助をして貰うこと自体は全く問題がありません。それらの事実を大学などの施設や、学会などの学術団体が透明性を確保して正確に把握しておくことが重要です。産学連携による医学系研究の実施に疑義があると指摘され、研究者が誹謗中傷された時に、あらかじめ自己申告により正しい情報が開示されていれば、学会として社会への説明責任を果たすなど、適切に対応することが可能になります。
10.COI状態の開示を義務づけることは、企業との産学連携活動を阻害することにつながるのではないですか?
COI状態の開示は、あくまで自己申告に基づくものであり、産学連携活動を規制したり、個人への正当な報酬などを減じるための取り組みをしようとするものではありません。医学系研究を発展させるには、産学連携を透明性、公明性を持って推進することが重要と考えられており、適切に医学系研究が行われ、その成果が適正に公表されることが、現場での医療の質の改善に結びつくと考えられます。
11.研究者がCOI 状態を適切に開示することで、どのようなメリットがありますか?
産学連携による医学系研究を実施した後に疑義があると指摘され、研究者が誹謗中傷された時に、あらかじめ自己申告により正しい情報が既に開示され、倫理審査を受けていれば、研究者本人及び研究機関や学会は社会への説明責任を果たし、適切に対応し疑義を晴らすことが可能になります。
12.講演の時、発表内容に関係する企業とのCOI 状態を最初に開示するのはなぜですか?
発表内容が特定企業寄りへとバイアスがかからないようにする自律的な効果があります。一方、発表の中立性、公明性は演者自身でなく、聴衆が客観的に判断することが大切であり、そのために、演者のCOI 状態を最初に知っておく必要があります。したがって、COI 状態にある特定企業が複数あるにもかかわらず、それらの開示をさっと流すのは避けていただきたい。
13.製薬企業は,産学連携の透明性確保という視点でどのような対応をしていますか?
日本製薬工業協会は2011 年に「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を公表し、会員企業が透明性に関する指針を策定し、研究機関及び研究者に前年に支払った総額を項目立てにて2014 年分から公開することを求めています。

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