一般社団法人 日本消化器がん検診学会

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学会概要

国際研究助成報告書

2014年11月11日現在

研究期間:2012年4月1日 〜 2013年3月31日
研究課題名:ベトナムにおける胃癌検診導入に向けての予備的研究
研究代表者:日山  亨
広島大学保健管理センター 准教授

研究成果の概要

 ベトナムにおける胃癌検診導入に向けての予備的研究として,侵襲性のない尿中ピロリ抗体検査(ラピランスティック:日本人の菌株で作成)の,ベトナム人におけるピロリ感染診断の感度・特異度について検討を行った。対象はホーチミン医科薬科大学病院で胃内視鏡検査を受けた200名(平 均年齢36.3歳,男性84名,女性116名)とした。ピロリ感染診断は,迅速ウレアーゼ試験(ピロリテック)および胃粘膜の組織診断により行った。両者もしくはいずれかが陽性のものをピロリ陽性とした。111名(55.5%)がピロリ陽性と診断された。尿中ピロリ抗体検査の感度は84.7%,特異度は89.9%と比較的高く,ベトナムでのピロリ診断に使用可能であると考えられた。

交付額

(金額単位:円)
  直接経費 間接経費 合 計
2012年度 1,000,000 0 1,000,000
総計 1,000,000 0 1,000,000

研究分野:上部消化管
研究デーマの分類:臨床研究

1.研究成果

 今回の検討により,尿中ピロリ抗体検査(ラピランスティック)は,ベトナムにおいてもピロリ感染診断に用い得ることが示された。ベトナムはピロリ感染率が高く,胃癌死亡率も高い国である。今後,ベトナムでの胃癌検診を考えたときに,安価で侵襲性のない,また,検査が簡便で特殊な機器を用いない尿中ピロリ抗体検査(ラピランスティック)は,検診方法の1つの候補となろう。

 現在,尿中ピロリ抗体検査(ラピランスティック)を用いて,さらに次の検討,すなわち,ピロリ陰性胃癌の頻度およびその臨床病理学的特徴についての検討を行っている。ピロリ陰性胃癌の頻度が高いようであれば,ベトナムにおける胃癌検診はピロリ感染診断+ペプシノゲン法を用いたものではなく,内視鏡等を中心とした画像診断による方法を採用すべきという結論になろう。ピロリ陰性胃癌の頻度が低く,ラピランスティックのピロリ感染診断に対する感度・特異度が高ければ,今後,尿中ピロリ抗体検査(ラピランスティック)等を用いた胃癌検診の普及に向けて,新たな対策を講じることとなる。

2.研究の実施・経過

2012年3月: 広島大学疫学研究倫理審査申請
2012年5月: 日本消化器がん検診学会国際共同研究助成決定
2012年5月: 広島大学疫学研究倫理審査許可
2012年6月: ホーチミン医科薬科大学研究倫理審査申請
2012年9月: ホーチミン医科薬科大学研究倫理審査許可
2012年9月: ホーチミン医科薬科大学病院における患者登録開始
2012年12月: ホーチミン医科薬科大学病院における患者登録終了(200名)
  • 患者の内訳は男性116名,女性84名
  • 患者の平均年齢は36.3歳(標準偏差:11.0)
  • 胃内視鏡診断:正常7名(3.5%),慢性胃炎147名(73.5%),胃潰瘍5名(2.5%),十二指腸潰瘍17名(8.5 %), 胃食道逆流症20名(10%),十二指腸炎2名(1%),胃食道逆流症+消化性潰瘍2名(1%)
  • ラピランスティックによるピロリ感染陽性者:103名(51.5%)
  • ピロリテックによるピロリ感染陽性者:105名(52.5%)
2013年1月: 胃粘膜生検標本をホーチミン市から広島市へ移送
2013年2月: すべての胃粘膜生検標本のスライド作製終了
2013年5月: 胃粘膜生検標本の鏡検によるピロリ感染診断終了
2013年7月: データ解析終了。論文執筆開始
2014年5月: World J Gastroenterolに論文発表

3.主な発表論文等

(研究代表者,共同研究者には下線)
[雑誌論文](計1件)
1 ) Quach DT, Hiyama T, Shimamoto F, Le QD, Ho LX, Vu NH, Yoshihara M, Uemura N. Value of a new stick-type rapid urine test for the diagnosis of Helicobacter pylori infection in the Vietnamese population. World J Gastroenterol 2014;20:5087-5091.
[学会発表](計3件)
1 ) 日山 亨吉原正治,伊藤公訓,茶山一彰,田中信治,Quach DT上村直実,嶋本文雄:ベトナムにおける胃癌検診導入に向けての予備的研究(国際共同研究)の概要.第43回日本消化器がん検診学会中国四国地方会,松山市,2013年12月15日
2 ) 日山 亨Quach DT,田中信治,伊藤公訓,茶山一彰,上村直実,嶋本文雄,吉原正治:ベトナムにおける胃癌検診導入に向けての国際共同研究.第52回日本消化器がん検診学会総会,仙台市,2013年6月7日
3 ) 日山 亨Quach DT,田中信治,伊藤公訓,茶山一彰,上村直実,嶋本文雄,吉原正治:ベトナムにおける胃癌検診導入に向けての予備的研究─最終報告─.第53回日本消化器がん検診学会総会,福井市,2014年6月6日

4.研究組織

 ( 1 )研究代表者
日山  亨
広島大学保健管理センター 准教授
 ( 2 )共同研究者
Quach Trong Duc
吉原 正治
上村 直実

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