倫理審査の不要な研究(カテゴリーA)の具体例について
倫理審査の不要な研究(カテゴリーA)のうち、以下について具体例を掲載しました。
- ① 9例以下をまとめた研究性のない症例報告
- 9例以下であっても、治療法の有効性・安全性を評価したり、治療例と非治療例を比較したり、ある疾病の平均年齢や治療期間を評価するなど、研究性のあるものは倫理審査委員会の審査が必要です。 具体的には、「〇〇の有効性を検討した」、「安全性を検討した」、「〇〇群と〇〇群を比較した」、「20例のうち、8例を対象とした」という内容や、演題名が「〇〇の検討」、という演題は一般的に該当しません。倫理審査が必要です。
逆に、「○○症例を経験した」、「有効な症例を経験した」、「安全であると思われた」などの記載は症例報告の範疇です。
- ② 傷病の成因・病態の理解、傷病の予防・診断・治療方法の改善、有効性・安全性の検証を通じて、人の健康の保持増進または傷病からの回復・生活の質の向上に資する知識を得ることを目的としない報告等※
- ※(例):
<1>単に治療方法の紹介、教育・トレーニング方法の紹介
<2>機関の医療体制や受診率向上の取り組みに関する紹介
発表の内容が、人の健康状態、傷病の予防・診断・治療、患者の傷病からの回復やQOLに関することではなく、検査件数など業としての医療に関する指標であったり医師等の医療スタッフの技術習熟度やlearning curveなどの教育に関する報告等が該当し、これらの倫理審査は不要です。
- ③ 論文や公開されているデータベース、ガイドラインのみを用いた研究
- 一般に、自機関の患者のデータを(解析して)発表する場合は該当しません。つまり、自機関の倫理審査が必要です。研究に用いる患者データベースが、既に論文やガイドラインなどに公開されている場合には倫理審査は不要です。
- ④ 既に学術的な価値が定まり、研究用として広く利用され、かつ、一般に入手可能な試料・情報を用いた研究
- 発発表者の機関の患者のデータを(解析して)発表する場合は該当しません。つまり、自機関の倫理審査が必要です。既に、論文や学会などで注釈なしで表示されるデータ、web上に公表されているデータ、よく知られた細胞株などを用いる研究が該当します(倫理審査不要です)。
例えば、NDBオープンデータ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177182.html)を用いる研究は審査不要です。NDBデータでも、オープンデータではなく、データを申請して取得する場合は倫理審査が必要です。
- ⑤ 個人に関する情報に該当しない既存の情報を用いた研究
- 「個人に関する情報」とは、個人情報、匿名加工情報、仮名加工情報、個人関連情報、及び死者に関するこれらに相当する情報のこといい、「個人に関する情報」に該当しない情報としては、例えば、いわゆる統計情報(特定の個人との対応関係が排斥されている場合に限る。)などがこれに当たります。また、「既存の情報」とは、①研究計画書が作成されるまでに既に存在する情報および②研究計画書の作成以降に取得された情報であって、取得の時点においては当該研究に用いられることを目的としなかったものを指します。
- ⑥ 既に作成されている匿名加工情報を用いた研究
- 当該研究に用いようとする前から個人情報保護法の規定に従って作成されている既存の匿名加工情報を指します。研究に用いようとするときまたは他の研究機関に提供しようとするときに個人情報等から新たに個人を特定できないよう加工する場合は含みません。
通常、自機関の症例をまとめて、ある疾患の特徴や治療の有効性などを発表する場合には、倫理審査が必要です。
- ⑦ 法令に基づく研究(臨床研究法、再生医療等安全性確保法は除く)
- 以下の法令が該当します。
- 「がん登録等の推進に関する法律」(平成25 年法律第111 号)に基づく全国がん登録データベース及び都道府県がんデータベース
- 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10 年法律第114 号)に基づく感染症発生動向調査
- 「健康増進法」(平成14 年法律第103 号)に基づく国民健康・栄養調査 ならびに、「医薬品医療機器等法」の定める
- 「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年厚生省令第28 号)
- 「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令」(平成16 年厚生労働省令第171 号)
- 「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成17 年厚生労働省令第36 号)
- 「医療機器の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令」(平成17 年厚生労働省令第38 号)
通常、自機関の症例をまとめて、ある疾患の特徴や治療の有効性などを発表する場合には、倫理審査が必要です。
2020年12月公開
2023年1月30日改正