理事長挨拶
2025年6月27日に開催されました臨時理事会において、一般社団法人日本消化器がん検診学会の第8代理事長を拝命いたしました。歴史ある本学会の舵取りを担うこととなり、大変光栄に存じますとともに、その責任の重さに身の引き締まる思いでおります。
本学会は、1962年に日本大学医学部教授の有賀槐三先生を中心に設立された「胃集検研究会連絡会」に端を発し、1959年に発足した「胃癌研究連絡会」の流れをくみながら、60年以上にわたり、日本における消化器がん検診の制度的・学術的発展を牽引してまいりました。現在では、医師に加え、診療放射線技師、臨床検査技師、保健師・看護師など、多様な職種の会員によって構成されており、それぞれの立場から検診の質の向上に尽力いただいております。こうした多職種の協働こそが、本学会の活動をより実践的で、かつ社会的意義のあるものとして支えていると実感しております。
本学会の大きな特色の一つは、単なる研究成果の発信にとどまらず、国や自治体が実施する「対策型検診」の現場や政策形成に対して、実践的かつ継続的に関与している点にあります。科学的根拠に基づく検診手法の提言や、精度管理に関する指針の策定を通じて、胃がんや大腸がんといった罹患率・死亡率の高い消化器がんに対する、実効性のある検診体制の整備と運用に大きく貢献してまいりました。
現在、がん検診の現場は大きな変革期にあります。AIやリキッドバイオプシーといった技術革新の進展、全国がん登録との連携によるデータ活用の促進、さらにはリスクに応じた個別化検診の導入など、学術と政策の両面からの高度な統合が求められています。とりわけ、膵がんや胆道がんといった難治がんに関しては、早期発見の実現に向けた新たなアプローチの確立が急務となっています。こうした挑戦的なテーマに対し、学会としても積極的に取り組んでまいります。
また、精度管理の強化、ICT基盤の整備、若手人材の育成、多職種連携の推進など、持続可能ながん検診体制の構築に向けた基盤整備も極めて重要です。なかでも、「将来を見据えた消化器がん検診の新たな挑戦」は、本学会がこれからの時代に果たすべき使命を示す重要なテーマであり、検診の質と信頼性をさらに高めるための羅針盤となるべきものと考えております。
本学会は、消化器がんによる死亡の低減を目指すことを使命とし、今後も実践と研究の両面からその実現に向けて着実に歩みを進めてまいります。引き続き、会員の皆様、関連学会、行政機関、そして地域の医療現場と連携を深めながら、より良い検診体制の構築に全力を尽くしてまいります。今後とも、皆様のご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
一般社団法人日本消化器がん検診学会
理事長 松田 尚久