一般社団法人 日本消化器がん検診学会

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お知らせ

消化器がん検診にあたっての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応について(第4報)

緊急事態宣言解除後の消化器がん検診の再開にあたっての注意について

 5月25日の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する緊急事態宣言の解除を受け、社会・経済活動の再開へ向けて行動制限が徐々に緩和されてきています。しかしながら、新型コロナウイルスに対するワクチンや特効薬がない状況では、今後も長期にわたる感染拡大予防対策が必要となることが予想され、日常生活においても新型コロナウイルス感染を想定した「新しい生活様式」の実践が求められております。

 一方、がん検診については、新型コロナウイルス感染が拡大し全国に緊急事態宣言が発出された4月以降、多くの市区町村で検診実施が延期されており、再開の目途が立っておりません。がんは我が国の死亡原因の第1位を占めており、がんの2次予防対策は国民のがん死亡減少のためには極めて重要です。対策型がん検診は国民の健康増進には欠くべからざる事業であり、緊急事態宣言が解除された地域では、その再開は優先度が高い社会活動のひとつと考えます。健康増進法では、地域住民の多様な需要にきめ細かく対応することが求められており、適切な感染拡大防止対策を施した上で、国民が対策型がん検診を受ける機会を確保する必要があります。しかし、新型コロナウイルス感染症に対する対応は長丁場になることが予想されるため、「新しい生活様式」に見合ったがん検診提供体制を整備することが肝要です。

 がん検診の再開にあたっては、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」に基づいて、手洗いや手指消毒・マスク着用・身体的距離の確保といった基本的感染対策の実施はもちろん、3密(換気が悪い密閉空間、多くの人が集まる密集場所、間近で会話や発生する密接場面)を回避した検診提供体制を整備する必要があります。実施主体である自治体や企業、また医師会等と綿密な打ち合わせを行い、精密検査の受け入れ状況も勘案して地域の実情に応じた適切な対応をとるようお願いします。
 もちろん、受診者の方々へは、新型コロナウイルスの感染リスクならびに感染拡大防止対策について十分説明し、がん検診を受けることの利益・不利益について理解を得ることが重要です。

 今後、新型コロナウイルスについては感染拡大が再燃する可能性もあります。政府や自治体等が公表する感染状況や各種情報に注視して、時宜を得た対応をとっていただくようお願いします。国内の感染状況については下記サイトを参考にしてください。

内閣官房:https://corona.go.jp/

厚労省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

 

消化器がん検診を再開するにあたって、本学会では以下の点に配慮し感染拡大防止に努めることを推奨します。

1.検診実施の延期を考慮すべき受診者について

対策型がん検診は基本的には無症状の住民を対象に実施すべきであり、下記に該当する場合は検診の延期をお願いする場合があることを事前に案内し、検診会場にもその旨を掲示する等の対応が望まれます。さらに、下記項目については問診で聞き取りを行い、受診者の体調不調の把握に努め、いずれかに該当する場合は検診実施を延期し、医療機関の受診を勧める等の対応を取ってください。延期の場合は検診日程の再設定を行うなどして受診機会の確保するようにしてください。
  ①  感冒症状(咳、鼻汁・鼻閉、頭痛、関節痛など)や発熱がある方(平熱より高い体温、あるいは体温が37.5℃以上を目安とする)
  強い全身倦怠感や息苦しさ・呼吸困難感がある方
  明らかな誘因のない味覚・嗅覚異常がある方
  明らかな誘因なく4−5日続く下痢、嘔気・嘔吐等の消化器症状がある方
  新型コロナウイルス感染症患者やその疑いがある患者(上記症状にて医療機関受診中のものを含む)と濃厚接触歴のある方
 

2週間以内に海外の感染拡大地域に渡航歴がある方

2.検診に従事するスタッフについて配慮すべきこと

受診者と接触機会があるスタッフについては感染しない・させないための配慮が必要です。
  受診者に対面する検診スタッフにはマスク着用やアルコール手指消毒の徹底を図る。
  検診に従事するスタッフは毎朝出勤前に検温する等の体調管理体制を整える。
  上記1-①~⑥に該当するスタッフは検診に従事させない等の対応を考慮する。
  消化器内視鏡検査など飛沫予防が必要な検査の場合、ガウン・フェイスシールド等を着用する。
※1:8団体合同マニュアル「健康診断実施時における新型コロナウイルス感染症対策について」
https://www.ningen-dock.jp/covid19_dock も参考にしてください。

3.巡回バスなどによる胃X線検診の実施にあたって

胃X線検診の多くは巡回バスによる集団検診で実施されています。バス検診などの実施にあたっては、3密(密閉・密集・密接)にならないように、十分な身体的距離の確保が可能な会場設営や受け入れ人数・受付時間等について工夫し、マスク着用や手指洗浄・消毒等について徹底するようお願いします。
  受診者にはマスク持参・着用をお願いする。
  受診者には検査当日朝に検温をお願いする(検査会場でも検温できるように体温計などを準備することが望ましい)。
  検査会場に手指消毒液や手洗い場を用意する。
  待合が混み合わないような広い待合スペースの確保、受け入れ人数の制限や混雑を避ける予約時間の設定等を考慮する。
  問診・指導等は対面にならないように配慮し、短時間で済ます。
  検診車への誘導人数を制限し、車内が混み合わないように配慮する。
  検診車の扉(管理区域以外)を開放したり換気扇を回したりするなどして換気に努める。
  検査台・手すり等は受診者ごとにアルコールまたは次亜塩素酸消毒液※2による清拭消毒を行う。
  バリウム服用後、検査中でもマスク着用をお願いする(げっぷ・おくびによる飛沫予防)。
  ※2 :一般社団法人日本環境感染学会による「医療機関における新型 コロナウイルス感染症への対応ガイド 第3版 http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID19_taioguide3.pdf では、アルコール(濃度60%以上)や次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度0.1%〜0.5%)が有効とされています。
  ※3 :稀ではあるが、バリウム誤嚥(16.6/10万件;平成29年度偶発症調査)により、咳嗽が誘発される場合があるので(誤嚥者の38%;平成29年度偶発症調査)誤嚥が確認された場合は、直ちに検査を中止して車外に受診者を誘導し、咳嗽を促すなどの対応を取ってください。

4.胃内視鏡検診の感染防護策について

胃内視鏡検診は新型コロナウイルスの感染リスクが高い検査です。ジャクソン式スプレーを用いた咽頭麻酔や経鼻内視鏡検査のスティック法による鼻腔麻酔等の前処置を担当するスタッフも自己防護具の着用が望まれます。
  ①  消化器内視鏡検査の実施にあたっては、スタンダードプリコーションを徹底する。
  飛沫予防策と接触予防策として、日本消化器内視鏡学会の提言では、フェースシールド付きマスク(またはゴーグル+マスク)、グローブ、ガウン(長袖)等の自己防護具の着用が推奨されていますが、物品不足のため患者ごとの交換できない場合は、最低限の自己防護策として下記のように対応することで構わないと考えます。

◎検査当日、内視鏡検査前に検温する。

◎患者・検査毎に手洗い・手指消毒を励行する。

◎グローブは患者ごとに交換する。

◎マスク着用は必須である。必ずしも患者毎に交換する必要はない。

◎フェイスシールドまたはゴーグル等を着用する。

 以下については、物品の入手状況を踏まえ、施設ごとの判断で適切に対応してください。

◎ガウン(長袖)は、ディスポ製品が入手困難な場合、検査専用の予防衣を用意し、患者ごとに交換する。

◎前処置・介助・機械洗浄を担当するスタッフにも同様の個人防護具を着用させる。

なお、大量のエアゾル発生が起きた場合や受診者の排泄物に直接接触した場合などはガウンやマスクも交換することが望ましいと考えます。

 

内視鏡検査時の感染対策については下記も参考にしてください。

※4:日本消化器内視鏡学会:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への消化器内視鏡診療についての提言
https://www.jges.net/medical/covid-19-proposal

※5:新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についてのQ&A
https://www.jges.net/medical/covid-19-qa#cq1

※6:厚労省新型コロナウイルス感染対策推進本部事務連絡「サージカルマスク、長袖ガウン、ゴーグル及びフェイスシールドの例外的取扱いについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/000622132.pdf

4月14日厚労省新型コロナウイルス感染対策推進本部からの事務連絡「サージカルマスク、長袖ガウン、ゴーグル及びフェイスシールド、の例外的取扱いについて」では、これらを再利用するなど個人防護具の例外的取扱いにより効率的に使用することが可能であるとしています。

5.便潜血検査による大腸がん検診について

新型コロナウイルス(COVID19)は便からも感染する可能性があることが知られています。便潜血検査の場合、通常は直接便を扱うことはありませんが、受診者が触った採便容器や封筒にウイルスが付着している可能性も否定できないので(プラスチック表面では72時間、段ボール紙では24時間残存)、検体を取り扱う場合にはグローブ・マスク着用が望まれます。また、万が一、測定中に液漏れなどが確認された場合にはアルコールや次亜塩素酸で清拭・消毒する等の対応を取ってください。

6.精密検査としての消化器内視鏡検査について

1次検診の実施にあたっては、精密検査の受け入れ体制が整っていることが必要です。精密検査を担う医療機関・医師会等と綿密な打ち合わせを行って、検診陽性者が精密検査を受けられないことがないようにしてください。既に実施された胃X線検診で要精検とされた者や便潜血検査の陽性者は「がんを疑う」ので、適切な感染対策を施した上で精密検査を実施する必要があります。検査の実施にあたっては上記3に準じて適切な感染防護策をとってください。大腸内視鏡検査の前処置として院内で下剤を内服させる場合、受診者が使用したトイレ等もアルコールや抗ウイルス作用のある消毒剤による清拭が必要です。排泄物を処理する場合には個人防護具の着用が望ましいと考えます。

感染防護策が十分にとれない場合や臨床的に新型コロナ感染を疑う場合は、検査対応が可能な施設に紹介するなどの措置をご検討ください。

7.腹部超音波検診について

任意型検診として行われる腹部超音波検診では、受診者と検査技師が密に接する可能性があるので注意が必要です。検査実施にあたっては関連学会からの情報も参考にしてください。

受診者・検査技師ともに検査中はマスク、フェイスシールドを着用することが望まれます。
検査室内の換気に努め、アルコールまたは次亜塩素酸消毒液による清拭・消毒を行う。
腹部超音波プローブのプローブカバーは受診者ごとに交換するのが望ましい。
腹部超音波プローブ※7 は、通常洗浄して低水準あるいは中水準消毒が推奨される。プローブの清拭消毒については、詳しくは下記を参照のうえ、メーカーにも確認して実施してください。
※7:日本超音波医学会:COVID-19 流行下において超音波検査と装置クリーニングを安全に実施する方法
 https://www.jsum.or.jp/committee/uesc/pdf/covid-19_safe_method.pdf

今回記しました内容については、政府等からの情報更新に伴い随時改正される可能性があります。

2020年5月26日
一般社団法人日本消化器がん検診学会
理事長 渋谷 大助


◉乳がん検診の新型コロナウイルス感染症への対応は日本乳癌検診学会HPをご参照ください。

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